世間がもし30人の基地だったら

日本南極地域観測隊に参加して、2015年12月に日本を出発しました。昭和基地で南極の冬を過ごして、2017年3月23日に帰国しました。帰ってからも南極に関わることがときどきあるので、更新を続けています。

悪魔のおにぎり、をたべてください、11月11日(月)まで

ローソンが、「悪魔のおにぎり」の販売数に応じた寄付をされるそうです。

www.lawson.co.jp

「悪魔のおにぎり」は以前南極観測隊が夜食として食べていたおにぎりです。テレビで紹介されて以降、SNSなどで話題になり、それをヒントにローソンが独自に開発しました。

 10月15日(火)から11月11日(月)までの4週間、悪魔のおにぎり、からあげ、おはぎが一個売れたら0.5円、極地研究所に寄付してくださるそうです。

 

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昨年の10月に発売以来、7月末までに4,600万個以上が売れているとのこと。一ヶ月に400-500万個として、寄付は200-300万円といったところでしょうか。

ほかにローソンからの寄付、これは隊員に喜ばれそう。

さらに、同商品をはじめとするからあげクン各種を、2019年11月に日本を出発される予定の第61次南極地域観測隊に寄贈し、隊員の皆さんに召し上がって頂きます。 

ぜひ、店員さんの制服も持っていきたいところです(笑)。

 

昭和基地より強い風

台風15号の被害に会われた方にお見舞い申し上げます。

千葉市では最大瞬間風速50メートルを超えたそうです。

tenki.jp

「最大風速」は10分間の平均風速の最大値、「最大瞬間風速」は瞬間風速の最大値です。一瞬でも大きな数値が出れば「最大瞬間風速」は更新されます。なので、瞬間風速は平均風速よりも大きく(だいたい1.5から2倍)なります。台風のニュースでは数字の大きい「最大瞬間風速」がよく報道されますね。


さて、南極・昭和基地でもしょっちゅう強風が吹きます。雪をともなうブリザードですね。私が体験した第57次越冬隊(2016年2月から2017年1月)での最大瞬間風速は47.3メートル。今回の台風はこれより強風だったことになります。なお、1957年の観測開始以降、最大の瞬間風速は61.2メートル(1996年)です。

 

台風と違って、昭和基地のブリザードでは強風が長いこと続くのです。また、風が強くなるとパウダースノーが舞い散って、あたりが見えなくなります。こんなときは外出が制限されます。2016年2月から2017年1月の一年間のうちだいたい11%に外出制限がかかっていました。 

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リザードの強風で折れた竹竿

未明に強風の音を聞いて、昭和基地のブリの夜を思い出しました。日本では、終わったあとのきつい雪かきはありませんが、超満員の電車での通勤もなかなか辛い。

月をめざす橇(そり)?

google alartで、新しい南極の建物のニュースが入ってきました。「南極移動基地ユニット」の実証実験を昭和基地でやるそうです。

www.misawa.co.jp

 

 

・この秋出発する61次隊で南極に運ぶ。

昭和基地で冬を越して、試験する。

・うまく行ったら、雪上車で牽引してドームふじにもっていく。

 ということです。

 

 長さ6メートル、幅2.5メートル、高さ3メートルくらい。

 プレスリリースの写真を見ると、大型雪上車とあまり大きさは変わらない感じです。

 

私が南極大陸に行ったときも、似たような大きさの「機械モジュール」と呼ばれる小屋を牽引していきましたが、ろくな暖房もなく、中は極寒のきびしいものです。  

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雪上車のすぐ後ろの白いのが機械モジュール

 

今回のユニットは太陽電池も着いていて、快適とは言わないまでも、だいぶ過ごしやすくなっているんじゃないでしょうか。

それにしても、

JAXAミサワホーム及びミサワ総研は、地上における未来志向の住宅や、月面等の有人拠点への応用を目指して共同研究を進めてきましたが、 

 と、サラッとプレスリリースに出ているのを見ると、本気で月に住むための研究開発をしている人がいるんだ、とたのしくなりますね。

 

出発までに、どこかで見られたらいいなあ。

 

 

村上祐資さんの「都会のイグルー」

第50次隊に参加されていた村上祐資さん、火星基地居住実験に参加されるなど昭和基地から宇宙を目指しているお方です。私は昭和基地にいるときに彼がパーソナリティを務めるラジオに出させてもらったり、

 

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先月には「SIRASE」船内でお目にかかったりしたのですが、 

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これまでゆっくりお話を伺う機会はありませんでした。

7月28日、私のうちから自転車で10分そこそこのところにある小学校で講演されるとの情報を得て、行ってまいりました。

www.city.suginami.tokyo.jp

 

朝10時から子どもたちが高校生の助けをえて「都会のイグルー」を作り、完成後15時から講演、との予定でした。

練馬のアメダスでは33度を超えていました。暑くて大変だろうなあと思っていたのですが、このアリーナには冷房が効いていました。

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アリーナのドアを開けたら正面にドームが現れました。完成間近か?と思いきや、一時間くらい開始が遅れそうとのこと。

 

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この型でプラダンボール板を切り抜いて、パーツをつくって組んでいきます。

今回のパーツは5種類だそうです。 

 

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壁のうえに、ドームを載せていきます。

 

講演では、極地よりも2015年のネパールでの地震のあとのイグルー作りと火星ミッションの話のほうが多かったです。スライドを多用せずに、一枚の写真でじっくり語るスタイルには感心しました。自分は、紙芝居のようにたくさんのスライドを作ってしまいがちです。もちろん、村上さんのほうが講演の経験も格段に多いでしょうから、まねするようなものではないのですが。

 

 私が参加した57次隊(2015-2017年)では村上さんから提供されたパーツを積んでいって、現地で組み立てました。

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 このときは壁はつくらず、色は白一色でした。この日に見たのは青白の2色ですが、やっぱりちょっとカラフルな方がいいですね。ネパールの人たちはカラフルなものがお好きだそうで、さらに色数が多くて楽しそうでした。

第61次日本南極地域観測隊「隊員室開き」

例年7月1日に「隊員室」が設置され、出発まで5ヶ月間あまり、ものを買ったり梱包したり船に運んだり、といった準備と、さまざまな訓練をしていきます。

7月5日(金)、極地研究所にて 、この秋に出発する第61次日本南極地域観測隊の「隊員室開き」が開催されました。

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七夕かざりにおねがいごと、「完全輸送」「越冬中、良い天気が続きますように、といった願い事に混じって「さかあがり」。


 南極観測隊員OBにとっては、新隊員の門出を祝うとともに、かつて同じ釜の飯を食った同期の隊員と再会できるのも楽しみです。 

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出発の前にはこの大きな倉庫が一杯になります。

 

61次隊のお披露目です。とくにはじめて観測隊に参加する人は、ワクワク感がMAXの時期でしょう。

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準備やサービスおつかれさまでした。

 

隊員室開きでは、バーベキューなどの軽食も供されます。調理隊員の初仕事ですが、隊員室に出勤しはじめて数日しか準備期間がないのでたいへんです。

今年は「舟盛り」が登場。

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何度か隊員室開きには参加してますが、このレベルのものを見たのは初めて

 西荻窪の居酒屋「じんから」の大将が調理隊員になったので、ちょっと期待はしていたのですが、さすがです。

なお、お店は大将越冬中も続けると伺いました。