読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

世間がもし30人の基地だったら

日本南極地域観測隊に参加して、2015年12月に日本を出発しました。昭和基地で南極の冬を過ごして、2017年2月1日に次の隊と交代。3月23日に帰国しました。

【書評】南極越冬記 西堀 栄三郎 著

映画評・書評


昭和基地の食堂には、日本でもっとも南の図書室 として紹介された書架があります。
「国内で出版されている、南極・北極・高山の探検記や越冬記、オーロラやペンギン、雪氷、大気、地学など南極の科学に関する普及書や一般向け学術書がほぼ網羅されています。」というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、たしかに他では読む機会のなさそうなめずらしい本、古い本、貴重な本がいくつもあります。
ちょっとずつ読んで、紹介していこうと思います。

最初は現在も書店で買える本です。「越冬隊員の必読書」とおっしゃる方もいます。

www.amazon.co.jp


第一次日本南極地域観測隊の越冬隊長による手記です。

著者の西堀栄三郎さんは探求心旺盛な超一流の技術者です。一読して、一つ一つの仕事をストイックに片付けていくひとであるなあと感じました。

たぶん日記から稿を起こしていて、記述は日付順になっています。いろんな仕事がとびとびに記載されている部分もあるので、ちょっと読みづらいかもしれません。
隊員、国内の準備、「宗谷」の運行状況などに対する不満あるいは不快感も、わりとむき出しに書いてあります。隊員ともめたであろうところには氏名が伏字になっていたりして、読んでいるほうが「大丈夫かよ」と心配になるくらい。
とくに印象的だったのは、マージャンに対する嫌悪感。「屋外には未知のものがいくらでもあるのに、探求もせずマージャンにうつつを抜かすとはけしからぬ」と。マージャンをインターネットに置き換えれば、わたし自身も忸怩たるものがありますが…。
第一次隊員は、現代の隊員とは比較にならない覚悟と意欲をもって南極に赴いたのだと思いますが、それにしても、生還できるかどうかもわからない状況で過ごすにあたって、この立派な人の指揮下にいるのは大変だろうなあ、と、現代のぐうたらな隊員である私はちょっと同情してしまいました。