南極大陸から雪上車とそりを回送する
今回の大陸行の主な目的は、S16という拠点にあるそりと雪上車を昭和基地に持ち帰ることでした。S16は昭和基地から20キロメートルほど離れた大陸にあって、標高は約600メートル。東京の高尾山と同じくらいの高さにあります。
建物も何もない、真っ白な平地にそりや雪上車が置いてありますが、絶え間なく吹き付ける雪で、こんなふうに埋もれていきます。
そりのまわりの雪を掘って、雪上車で引き出します。今回は十数台のそりを雪中からもどしました。
昭和基地でやった作業と同じではありますが、そりはしっかりと雪に埋もれていて、寒さと強風のなかでの作業は厳しいものです。凍傷にならないように、服装にはつねに注意しないといけません。
雪上車も野ざらしになっているので、現地で応急処置をして、走れるようにします。寒風の中で、真っ白になりながらの作業です。
最終日に、掘り出したそりと大型雪上車の一部を昭和基地まで回送しました。
なんでこんなに苦労して、出かけてこなければならないのか。それは昭和基地が東オングル島という島の上にあるからです。
基地と南極大陸の間を行き来するには海を渡らないといけません。海、と言ってもほとんどが凍っているのですが、大陸を踏破できる大型雪上車は重さが10トン以上あるので、いちばん寒くて氷が厚くなるこの時期でないと、大陸と昭和基地の間を走ることができません。
雪上車もそりも、設備の整った昭和基地内で整備・修理をしたあと、氷が薄くなる前に大陸に戻す必要があります。暖かくなるまえに、大急ぎの作業が始まります。