世間がもし30人の基地だったら

日本南極地域観測隊に参加して、2015年12月に日本を出発しました。昭和基地で南極の冬を過ごして、2017年3月23日に帰国しました。帰ってからも南極に関わることがときどきあるので、更新を続けています。

TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」第十二話:内陸旅行

一話で内陸旅行へ行って帰ってきてしまいましたね。雪上車での旅行は毎日同じようなことの繰り返しなので、これで十分なのかもしれません。

まず、内陸旅行ってなに?というところから。
昭和基地南極大陸から4キロほど離れた島にあります。南極大陸へは海を越えないと行けません。夏は観測船のヘリコプターで、冬は凍った海を雪上車で渡ります。
女子高生たちが乗っていた雪上車は、SM100型という重さが11トンくらいある車両で、その多くは南極大陸の拠点に置いてあります。真冬の、寒さが厳しく氷が厚い期間だけ、昭和基地に乗ってくることができます。

私は2016年の10月に、17日間の旅行に行ってきました。

 

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このときは、8人で4台の雪上車を使いました。車内は十分に広いのですが、例えば車が故障して動かなくなった、という事態に陥っても、別の車に移って全員が無事に帰れるように、台数には余裕をもって計画します。

二人なので、夜はこんな感じで休みます。彼女らが寝ていた二段ベッドは使いませんでした。

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二人で交代で運転します。移動中はトランプで遊んだりはしません。エンジン音と振動が激しくて、声を張らないと会話もできないのです。

ちなみに、免許は必要ありません。昭和基地で半日ほど講習を受けるだけ。

 

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まあ、対向車は来ませんし、歩行者が飛び出してくることもないでしょうからね、たぶん。

アニメでも描かれていましたが、給油は手回しポンプで、ドラム缶から雪上車へ軽油を補給します。雪上車の燃費は一リットルで200メートルくらい。寒くなると燃料がちょっとドロリとしてくるので、ポンプが重く、仕事も辛くなります。

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とまあ、懐かしく見た今回でしたが、いちばん印象深かったのは、冒頭の家族へ連絡のシーン。南極では、ちょっとしたミスで命が危険にさらされます。これまで60年以上の日本南極地域観測隊の歴史上、隊員の死者は第4次隊の一人だけですが、これは僥倖に近い、との話も聞きました。
娘の通う学校に、こんな連絡をさせることがなくて、本当に良かった。