西オングルのお線香
西オングルでは持参したテントか、現地に設置してある居住カブースに泊まります。「居住カブース」というのは、居住用の小屋をソリに載せたもので、雪上や海氷上を雪上車で牽いて移動できます。中はこんな感じ。
ふとんのほかに、非常用の食料、燃料などが置いてあります。そして、お線香も。
1960年10月10日、第4次隊の福島隊員がブリザードの中、行方不明となりました。遺体は1968年2月、西オングル島内で発見されました。行方不明になってから7年後でした。
発見場所にはケルンが積まれています。西オングルを訪れたら、ここにお参りをします。我々も、初日の夕食前に10分あまり歩いて行って、手を合わせてきました。
昭和基地からは5kmくらい離れたところです。ブリザードで何も見えない中、方向感覚をなくして歩き続けて、ここで息絶えたものと推察されています。
向こうに見える島にはペンギンの巣があって、なきごえが聞こえてきます。
ここでご遺体を火葬にしたと伝えられています。燃やした木材ののこりと、風よけの金属板がなまなましい。
南極で亡くなった日本の観測隊員は、これまでのところ福島隊員だけです。五十数年前とくらべると昭和基地は格段に立派に、快適になりました。しかし、建物の外の環境は、南極のままです。
安全への意識は保ち続けなくてはいけません。すべては無事に日本に帰るために。