世間がもし30人の基地だったら

日本南極地域観測隊に参加して、2015年12月に日本を出発しました。昭和基地で南極の冬を過ごして、2017年2月1日に次の隊と交代。3月23日に帰国しました。

南の島でなつかしい袋を見る

父島への出張は6月16日に出発して、21日に帰ってきました。気象庁は小笠原の梅雨入り梅雨明けを発表していませんが、ずっとぐずついた天気で、ほとんど青空を見ることがありませんでした。

曇り空の下、港で見覚えのある袋が並んでいるのを見ました。

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タイコン、という折りたためる袋で、昭和基地ではゴミの持ち帰りに使っていました。

 

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父島でもこれにゴミを詰め込んであります。後ろに写っている青い船で運んで、本土で処理するそうです。

こちらは圧縮した空き缶をフォークリフトで運搬中。

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こうした荷役作業を見て「懐かしい」と思うのは、だいぶ世の中の感覚と外れてますなあ。

南の島でシロクマについて考える

小笠原諸島の父島に出張してきました。父島を含む小笠原諸島世界自然遺産に登録されています。それは、海や自然がキレイだからではなく、この島々が過去に一度も大陸と地続きになったことがないために、風や海流や鳥によって運ばれてきたさまざまな生きものがここにしかない姿を保っているから、だそうです。
この写真の右手前に写っている"タコノキ"。根本に広がっているのは人が立てた支柱ではなくて、根をタコの足のように広げているものです。

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独特の進化を遂げた環境に、そこにいない生きものを持ち込んでしまうと、固有種がたいてい負けます。食われたり、植物だと生えている場所を占拠されたりするわけです。対策として、たとえば野生化した猫を捕まえるための箱が道路の脇の林の中においてありました。

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猫がこの箱に入ったら、金網の扉がぱたんと閉まるのでしょう。

 

森の中をうろつく猫が減ったおかげで、固有種の"アカガシラカラスバト"が増えてきているそうです。この写真は宿の近くを散歩していて見つけたもの。

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人里の近くで見られるとは思わなかった。

私自身、外来生物については知識はあったものの、あまり関心はなかったのです。
しかし、今回、往路の船中で関連するパンフレットを見ていて、「そういえば南極も似たような環境にあるなあ」と思い当たりました。
5月25日の代理人更新の記事にhrktmrさんから「南極にはオオカミ、シロクマはいなく、北極にはいるんですね。その違いはなんでしょう?」というコメントを頂いていましたが、その答えはやはり「北極には歩いていけるけど、南極には来られなかった」ということであるようです。

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でも、たとえばシロクマを何頭か南極に持ち込んで、ペンギンやアザラシをエサに繁殖を始めたら、と考えると…外来生物の怖さがわかるような気がします。

・・・57・58・59

第59次日本南極地域観測隊は今年11月に昭和基地に向けて出発します。隊員の候補者も固まってきているようです。

6月13日、極地研究所で宙空圏関連観測引継会が開催されました。私が南極で担当したオーロラ、地磁気、レーダーなどの観測を担当する予定の人へ、観測の説明、作業の概要、注意点などを説明する会です。

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あわせて10以上のプロジェクトについて、国内の観測責任者が説明して、私のような帰ってきた人が補足します。

3時間あまりの説明会のあと、衛星回線で昭和基地と極地研究所を結んでテレビ会議です。 f:id:nankyoku_30nin:20170614124856j:plain

 

58次隊は着ぐるみで登場。そろそろミッドウィンターが近づいて、テンション上がり気味?

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今年の昭和基地は雪が少ないらしい。除雪の苦労が減りそうで、なんとも羨ましいことです。

日本科学未来館の館長さんは

11日、お台場にある日本科学未来館へ行ってきました。時間の関係で企画展は見てきませんでしたが、ドームシアターと常設展示だけでも十分楽しめました。ドームシアターのプログラムは、これまで見た3D画像のコンテンツで一番見応えがありましたね。

  

 常設展では、人型ロボット:ASIMOが歩いているのを初めてみました。

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日本科学未来館の館長の毛利衛さんは1992年にスペースシャトルで宇宙を飛んだ人ですが、その後、2007年1月に登山家の今井通子さん、作家の立松和平さんと、開設50周年を迎える南極・昭和基地を訪れています。

 

わたしはそのとき、第48次日本南極地域観測隊に参加して、昭和基地に居ました。わたしたちが「しらせ」で基地に着いたあと、2週間くらいで飛行機でお越しになりました。毛利さんとはBARでご一緒する機会にも恵まれました。

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そのときに書いていただいた色紙は、大事に保存してあります。

毛利さんが書いた「地球まほろば」の”まほろば”は、「素晴らしい場所」「住みやすい場所」という意味の日本の古語だそうです。

 

毛利さんたちが帰ったあと、越冬に入った48次隊のバーの名前は「まほろBAR」になりました。

一カ月で2キロ減

(問)南極で暮らすと太るの?

(答)はい、最大で8キロ近く太りました。

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 3月23日に帰国して一カ月くらいは、体重はあまり変わりませんでした。呑み会がたくさんあったほか、家でもちょっといいものを食べていたりしたのでしょうね。

そろそろまずいなあ、と思って5月からダイエットをはじめました。わたしは、痩せようとするときはレコーディングダイエットを実行します。

レコーディング・ダイエット決定版 (文春文庫)

レコーディング・ダイエット決定版 (文春文庫)

 

 この本には、

・最初は食べたものを書いて記録する。

・カロリー計算をする。

・一定のカロリーのなかで収める。

 …と順を追って詳しく書かれていますが、私の場合は、食べたものをメモしていくだけで体重が落ちてくれます。

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ちょっとしたお菓子をつまむ、なんてことが減るからでしょうかね。

5月初めから一カ月間で2キロくらい減量できました。一昨年の12月、昭和基地に向けて出発するときに比べると2キロほど重いのですが、日本の夏に向けて、ちょっと体力的に余裕をもっておこう、ということで、このへんで減量は一休みします。

 

南極観測隊員のゾモ、ネパール・ランタン谷へ

 今年2月に、ネパール地震の被災地復興支援「ゾモTシャツ」を紹介しました。

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2015年4月のネパール大地震で被害を受けたランタン谷にヤクと牛の混交種のメス「ゾモ」を寄付して牧畜の再開を支援しようという試みです。

 

越冬中の57次南極観測隊員によるTシャツの売上で購入され、ランタン村に落ち着いたゾモの写真をいただきました。
名前は「メトー」、花という意味。顔、背中、下肢が白いゾモはきれいなので「花」と呼ぶそうです。女の子だから、お花ちゃん、か。

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 ゾモは、ヤクの3倍から5倍の乳を出すんだそうです。たっぷりお乳を出して、しっかり稼いでくださいな。

 

ゾモTシャツを着てランタン谷にゾモを贈る企みに関心のある方は、こちらをご覧ください。

dzomo.org

販売価格2,000円のうち1,000円が支援に充てられるそうです。

映画「日本南極探検」(1912年・田泉保直撮影)

Lixilギャラリーを見るために京橋まで来たあと、せっかくなのですぐ近くにある国立近代美術館フィルムセンターを覗いてみることにしました。

東京国立近代美術館ーフィルムセンター


南極関連の物があるとは思っていなかったのですが、常設展示のなかに、映画「日本南極探検」(1912年・田泉保直撮影)の展示がありました。白瀬矗が南極探検で巨額の借金を背負って、全国各地で映画上映と講演の会を開いて返済したと聞いていましたが、この映画がどのように制作されたのか、初めて知りました。

 

白瀬矗の南極探検隊講演会の会長だった大隈重信に勧められて、映画会社、M.パテー商会(にっかつの前身のひとつ)が当時23歳の田泉保直を派遣したのだそうです。これが壮行写真。

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「日本南極探検」は、 日本の映画産業がまさに始まった直後に製作された映画だったといっていいでしょう。

3分間のダイジェスト版が展示されていて、何回も見入ってしまいました。 

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別のコーナーに展示されていた1930年頃のチラシです。 撮影から18年くらいあとですが、「日本南極探検」が白瀬さんの講演つきで上映されていたようです。

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(常設展示の写真は撮ってもよいのですが、フラッシュを光らせるのは遠慮したので、ちょっとぶれた写真になっています。すみません。)

100年前に、動いているペンギン、アザラシなど南極の風景を見せられれば、お客さんもたくさん来てくれたことでしょう。

 

昨年11月、私が昭和基地にいたときに、このフィルムセンターで上映時間49分の日本南極探檢 [デジタル復元版]上映会があったようです。

日本南極探檢[デジタル復元版] | 東京国立近代美術館フィルムセンター

見たかったなあ! もう一回やってくれないかしら。