コロナ禍の南極観測隊
みなさん、それぞれのお子さん、お住まい、お仕事などなどの条件の中で耐え忍ぶ日々を送っていらっしゃるかと思います。私もそれなりにしんどい日々ですが、そんな中、寝ぼけまなこにbreaking news!が。
隊員半分、という見出しで、第62次観測隊員18人が決まったとのこと。私が参加した57次隊が30人だったので、「そんなにギリギリで行くのか!」とおどろいたのですが、
文科省の 南極地域観測統合推進本部総会のサイトを見ると
80名(越冬隊35+夏隊45)を予定していたところを43名(越冬隊31+夏隊12)にします、ということで、削減は主に夏隊です。
なにごとも、一次情報に当たるのは大事ですね。
例年なら、この週末が隊員室開きなのですが、今年はそんな声も聞こえてきません。 nankyoku-30nin.hatenablog.com
冬訓練、夏訓練も中止。私が担当する予定の、観測業務の事前訓練もできるかどうか。 nankyoku-30nin.hatenablog.com
なによりこの先の感染状況では、ほんとにどうなるかわからないのですが、、、
最後は隊員の”現場力”に期待することになるのか、という気がします。
まあ、その現場力は、半端ないですからね。悲観も楽観もせず、準備を進めていきましょう。
静かな帰国
3月20日に、南極から第60次越冬隊・61次夏隊が成田空港に帰国しました。わたしたち観測隊OBには「お出迎えはご配慮ください」(=ご遠慮ください)という連絡がありました。
www.47news.jp
コロナウイルスはオーストラリアでも猛威を奮っているため、クルーズ船入港が制限されていて、南極観測船「しらせ」の乗員も入国できなかったとのこと(・・・クルーズ船?)
去年の12月にオーストラリアを離れて南極へ行って帰ってきた、世の中で一番、感染の恐れのない船だと思うのですが、まあ、決まりだったらしょうがない。
19日にシドニー到着後、街に一歩も足を踏み入れることなく、翌日早朝に「しらせ」からバスで空港へ移動、そのまま帰国となったそうです。シドニー滞在がなくなり、予定より2日早い帰国で、飛行機のきっぷも買い直したんでしょう。関係者の皆様はおつかれさまでした。
「しらせ」はシドニーで必要な物資の積み下ろしを終え次第、日本へ向けて出航したそうですが、日本への入港はスムーズにやってほしいなあ。
ともあれ、おつかれさまでした。
大気電気学会で発表してきました
1月10,11日に静岡市で開催された大気電気学会に参加してきました。
大気電気学会とは、雷、大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)、地震などを、地球・宇宙の電気にかかわる観測で研究するひとたちの集まりです。
今回は、2018年、2019年に相次いだ、巨大台風の観測に基づく研究を集めた、台風関連現象の特別セッションが開催されました。
私は、昨年12月に発表した「オーロラ発生時に電場が変化している」という解析に、先に出ている研究結果との整合性や、宇宙線(宇宙からやってくる高エネルギーの放射線)などの影響について追加考察した内容を発表してきました。
ところで、学会を開催するためには、会場を確保したり懇親会を企画したり、こまかなお仕事がたくさんあるのです。
お世話になっている先生が中心になって、静岡県立大学がホストしたので、わたしも受付に座って参加費を集めたり名簿のチェックをしたり、お手伝いをしてきました。
参加者60人ほどの小さな研究集会ですが、初日の朝の受付は大忙しでした。
お昼休みも留守番をおかないといけないので、街をぶらつく余裕はあまりなかったです。ちょっと残念でしたが、帰りの新幹線からは夕暮れの富士山を眺めることができました。
脳が縮む??
新年あけましておめでとうございます。
今年も、更新の間隔はともかく、ぼちぼちとブログは続けていく所存です。よろしくお願いいたします。
さて、暮れの30日に61次隊が昭和基地に入ったとのニュースがありました。
「トッテン氷河」観測のため、例年より一週間くらい遅いです。立て込んでいる夏の仕事を考えると、現地は元日も返上で働いていることと思います。おつかれさまです。
それより気になっているのは、Google Alartでお知らせのあったこのニュース。
調査隊隊員の南極滞在前後の脳をスキャンしたところ、脳が出発前よりも縮小していた
という論文が出た、とのこと。
掲載された「The New England Journal of Medicine」は超一流の学術雑誌ですから、科学的な根拠は示されているものと思います。原文を確認すべきところですが、お金を払わないと読めないようになっています。
Biglobeの記事によると
特に変化が目立ったのは、学習と記憶を司る海馬の「歯状回」という領域で、隊員8名で縮小が確認された。この領域は、記憶を記録するためにニューロン新生が活発に生じているところなのだが、隊員たちの歯状回は平均4〜10パーセント小さくなっていた。
さらに歯状回の縮小が激しかった隊員ほど、出発前よりも空間処理や選択的注意といった認知能力が低下していることも確認された。
私は2回、南極観測隊に参加しましたが、脳の大きさなんてのは測っていないはずです。帰国後しばらく、日本国内のテンポになじめないことがあり、関係者では「南極ボケ」と呼ばれていますが、もしかして・・・。
この調査では隊員数は9人。日本の越冬隊は30人あまりですが、この人数だと脳の収縮を防げるものなのか?そして縮小した脳は復活するのか?
・・・とまあ、いまさら気に病んでもしょうがない。ボケた(?)脳を鞭打って、今年も研究をちょっとずつ進めていきます。まずは1月10日、日本大気電気学会で発表するネタを、年末年始もがんばっております。
極域科学シンポジウムで発表してきました
11月27日に第61次南極地域観測隊が出発しました。今年は見送りにはいけなかったのですが、その1週間後、12月3日から5日まで、極地研究所で「極域科学シンポジウム」が開催され、私も発表してきました。
12月4日の水曜日、ひさしぶりに極地研究所に向かいます。
今回はポスターでの発表になりました。英語で作成したので、前の週末はなかなか大変でした。
今、私が研究しているのは、大気の中にある「電気」についてです。
昭和基地では10年くらい前から観測が続けられていますが、なかなか解析が難しいのです。
たとえば昭和基地の雪はほとんど粉雪で乾いているので、電気を帯びています。雪の中ではデータにノイズが入って、例えばオーロラとの関係を研究するには使えない、ということになります。このノイズを取り除く方法を研究して、良いデータだけを取り出す事ができるようになりました。そして、「良いデータ」を見ていくと、派手なオーロラが出ているとき、大気の電場が弱くなっているのでは?という事例を示すことができました。
こうした学会、シンポジウムは、研究者同士の情報交換の場でもあります。今回も、今後の研究のためにほしかったデータの入手について相談したり、また現れた現象の解釈について議論したり、有意義な時間を過ごせました。
まずまずがんばりましたが、ゴールは論文としての発表です。サラリーマンをしながら研究を続けていくのは大変ですが、日々、じわじわと進めております。年末年始はがんばらなくちゃ。