世間がもし30人の基地だったら

日本南極地域観測隊に参加して、2015年12月に日本を出発しました。昭和基地で南極の冬を過ごして、2017年3月23日に帰国しました。帰ってからも南極に関わることがときどきあるので、更新を続けています。

大気電気学会で発表してきました

1月10,11日に静岡市で開催された大気電気学会に参加してきました。

 

大気電気学会とは、雷、大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)、地震などを、地球・宇宙の電気にかかわる観測で研究するひとたちの集まりです。

 

今回は、2018年、2019年に相次いだ、巨大台風の観測に基づく研究を集めた、台風関連現象の特別セッションが開催されました。

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台風に伴う雷の発生メカニズムは、まだよくわかっていません。

私は、昨年12月に発表した「オーロラ発生時に電場が変化している」という解析に、先に出ている研究結果との整合性や、宇宙線(宇宙からやってくる高エネルギーの放射線)などの影響について追加考察した内容を発表してきました。 

nankyoku-30nin.hatenablog.com

 

ところで、学会を開催するためには、会場を確保したり懇親会を企画したり、こまかなお仕事がたくさんあるのです。

お世話になっている先生が中心になって、静岡県立大学がホストしたので、わたしも受付に座って参加費を集めたり名簿のチェックをしたり、お手伝いをしてきました。

参加者60人ほどの小さな研究集会ですが、初日の朝の受付は大忙しでした。

 

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名札に赤い丸いシールが貼ってあれば、懇親会費を支払い済み。

お昼休みも留守番をおかないといけないので、街をぶらつく余裕はあまりなかったです。ちょっと残念でしたが、帰りの新幹線からは夕暮れの富士山を眺めることができました。

 

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脳が縮む??

新年あけましておめでとうございます。

今年も、更新の間隔はともかく、ぼちぼちとブログは続けていく所存です。よろしくお願いいたします。

 

さて、暮れの30日に61次隊が昭和基地に入ったとのニュースがありました。

nipr-blog.nipr.ac.jp

トッテン氷河」観測のため、例年より一週間くらい遅いです。立て込んでいる夏の仕事を考えると、現地は元日も返上で働いていることと思います。おつかれさまです。

 

それより気になっているのは、Google Alartでお知らせのあったこのニュース。

news.biglobe.ne.jp

調査隊隊員の南極滞在前後の脳をスキャンしたところ、脳が出発前よりも縮小していた

という論文が出た、とのこと。

掲載された「The New England Journal of Medicine」は超一流の学術雑誌ですから、科学的な根拠は示されているものと思います。原文を確認すべきところですが、お金を払わないと読めないようになっています

 

Biglobeの記事によると

特に変化が目立ったのは、学習と記憶を司る海馬の「歯状回」という領域で、隊員8名で縮小が確認された。この領域は、記憶を記録するためにニューロン新生が活発に生じているところなのだが、隊員たちの歯状回は平均4〜10パーセント小さくなっていた。

さらに歯状回の縮小が激しかった隊員ほど、出発前よりも空間処理や選択的注意といった認知能力が低下していることも確認された。

 

私は2回、南極観測隊に参加しましたが、脳の大きさなんてのは測っていないはずです。帰国後しばらく、日本国内のテンポになじめないことがあり、関係者では「南極ボケ」と呼ばれていますが、もしかして・・・。

 

この調査では隊員数は9人。日本の越冬隊は30人あまりですが、この人数だと脳の収縮を防げるものなのか?そして縮小した脳は復活するのか?

 

・・・とまあ、いまさら気に病んでもしょうがない。ボケた(?)脳を鞭打って、今年も研究をちょっとずつ進めていきます。まずは1月10日、日本大気電気学会で発表するネタを、年末年始もがんばっております。

 

 

極域科学シンポジウムで発表してきました

11月27日に第61次南極地域観測隊が出発しました。今年は見送りにはいけなかったのですが、その1週間後、12月3日から5日まで、極地研究所で「極域科学シンポジウム」が開催され、私も発表してきました。

12月4日の水曜日、ひさしぶりに極地研究所に向かいます。

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青空の下の極地研究所

 

今回はポスターでの発表になりました。英語で作成したので、前の週末はなかなか大変でした。

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折ジワがついちゃいましたね

今、私が研究しているのは、大気の中にある「電気」についてです。

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この人の後ろにあるのが、大気電場を測る機械です

昭和基地では10年くらい前から観測が続けられていますが、なかなか解析が難しいのです。

たとえば昭和基地の雪はほとんど粉雪で乾いているので、電気を帯びています。雪の中ではデータにノイズが入って、例えばオーロラとの関係を研究するには使えない、ということになります。このノイズを取り除く方法を研究して、良いデータだけを取り出す事ができるようになりました。そして、「良いデータ」を見ていくと、派手なオーロラが出ているとき、大気の電場が弱くなっているのでは?という事例を示すことができました。
 

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この雪粒一つ一つが電気を帯びていて、ノイズ源になります

  こうした学会、シンポジウムは、研究者同士の情報交換の場でもあります。今回も、今後の研究のためにほしかったデータの入手について相談したり、また現れた現象の解釈について議論したり、有意義な時間を過ごせました。

 

まずまずがんばりましたが、ゴールは論文としての発表です。サラリーマンをしながら研究を続けていくのは大変ですが、日々、じわじわと進めております。年末年始はがんばらなくちゃ。

悪魔のおにぎり、をたべてください、11月11日(月)まで

ローソンが、「悪魔のおにぎり」の販売数に応じた寄付をされるそうです。

www.lawson.co.jp

「悪魔のおにぎり」は以前南極観測隊が夜食として食べていたおにぎりです。テレビで紹介されて以降、SNSなどで話題になり、それをヒントにローソンが独自に開発しました。

 10月15日(火)から11月11日(月)までの4週間、悪魔のおにぎり、からあげ、おはぎが一個売れたら0.5円、極地研究所に寄付してくださるそうです。

 

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昨年の10月に発売以来、7月末までに4,600万個以上が売れているとのこと。一ヶ月に400-500万個として、寄付は200-300万円といったところでしょうか。

ほかにローソンからの寄付、これは隊員に喜ばれそう。

さらに、同商品をはじめとするからあげクン各種を、2019年11月に日本を出発される予定の第61次南極地域観測隊に寄贈し、隊員の皆さんに召し上がって頂きます。 

ぜひ、店員さんの制服も持っていきたいところです(笑)。

 

昭和基地より強い風

台風15号の被害に会われた方にお見舞い申し上げます。

千葉市では最大瞬間風速50メートルを超えたそうです。

tenki.jp

「最大風速」は10分間の平均風速の最大値、「最大瞬間風速」は瞬間風速の最大値です。一瞬でも大きな数値が出れば「最大瞬間風速」は更新されます。なので、瞬間風速は平均風速よりも大きく(だいたい1.5から2倍)なります。台風のニュースでは数字の大きい「最大瞬間風速」がよく報道されますね。


さて、南極・昭和基地でもしょっちゅう強風が吹きます。雪をともなうブリザードですね。私が体験した第57次越冬隊(2016年2月から2017年1月)での最大瞬間風速は47.3メートル。今回の台風はこれより強風だったことになります。なお、1957年の観測開始以降、最大の瞬間風速は61.2メートル(1996年)です。

 

台風と違って、昭和基地のブリザードでは強風が長いこと続くのです。また、風が強くなるとパウダースノーが舞い散って、あたりが見えなくなります。こんなときは外出が制限されます。2016年2月から2017年1月の一年間のうちだいたい11%に外出制限がかかっていました。 

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リザードの強風で折れた竹竿

未明に強風の音を聞いて、昭和基地のブリの夜を思い出しました。日本では、終わったあとのきつい雪かきはありませんが、超満員の電車での通勤もなかなか辛い。