世間がもし30人の基地だったら

日本南極地域観測隊に参加して、2015年12月に日本を出発しました。昭和基地で南極の冬を過ごして、2017年3月23日に帰国しました。帰ってからも南極に関わることがときどきあるので、更新を続けています。

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

越冬の医療講習

越冬中の夕食は午後6時から。ミーティングが6時45分からで、だいたい7時まえには終わります。 そのあとは、だいたい自由時間になりますが、1時間ほど安全講習の時間が設けられる日もあります。隊員が講師になってお話をきく講習が多いのですが、29日の夜は…

昭和基地からロケットが翔んでいた

28日、月末の電力使用量調査のために”RT棟"に行ってきました。写真の右側の建物です。 RT棟の正式名称はレーダー・テレメーター棟です。オレンジ色の2つのドームは、以前は中にレーダーが入っていましたが、このレーダーもRT棟も、今は使われていません。 昭…

南極でよもぎ餅

昭和基地からオーストラリアを経由して、56次越冬隊と57次夏隊が帰国しましたね。南アフリカのケープタウン沖まで行ったり、途中でオージーのお客さんを乗せたり、おつかれさまでした。 そのお祝いではないですが、27日の日曜日の午後に、おもちをつきました…

あざらしくん

南極大陸の上陸口、とっつき岬の近くまで来たら、氷の上に黒い点々が見えました。 あんなところに岩が出ていたかなあ、と思って近づいてみると、 ウェッデルアザラシの群れでした。写っていないのもあわせて、12頭いました。こんな大きな集団は珍しいです。 …

南極大陸に上陸しました

26日は、南極大陸の「とっつき岬」に上陸しました。 57次隊では、これまでに2回、とっつき岬へのルート工作をしていて、大陸目前にまで到達していました。しかし、海氷から大陸に上がるところに氷のひび割れ(クラック)がたくさんあって、上陸できていま…

【書評】南極越冬日記 中野 征紀 著

第一次日本南極地域観測隊長の「南極越冬記」を読んで、「立派な人の指揮下にいるのは大変だろうなあ」という感想を持ったのですが、その指揮下にいた人の手記が食堂書架にありました。 amazonでは2016年3月26日現在で「中古品の出品:1点、8750円」です。昭…

ブリ後点検に歩く

3月21日から22日かけてのブリザードでは、大量に雪が降りました。 もう少し寒くなって、足元が固まってくれば歩くのもラクになりますが、雪かきしないと、通勤が大変です。 以前紹介した荒金ダム湖も雪に覆われました。 これは今年1月28日の写真です。 nanky…

地球の影が見えました

24日は久しぶりに晴天になりました。日の出の直後の空です。 画面の右のほうから日が昇ります。左のほうの水平線近くは、薄い雲がかかっていますが、青黒い色になっています。 この色の部分は「地球影」と呼ばれる、地球の影になっているところです。早朝西…

タンクに咲く霜の花

このところの冷え込みで、基地で使う水をためる水槽(小学校のプールの1/5くらいの大きさです)の水面に氷が張りました。これは、21日朝の写真です。 水槽の水を循環させているので、氷の円盤はゆっくりと回転しています。 表面に着いているのはfrost flo…

【書評】宇宙主夫日記 山崎大地著(代理人投稿)

友達とのおしゃべりで「南極観測隊は出発したら、たとえ代理人が死んでも帰ってこないんだよ~」と力説しても、相手はぴんとこないようで、「まぁまぁ」とたしなめられてしまうことが多く、腑に落ちない代理人です。 確かに、ご本人が越冬中に死ぬ可能性は限…

蜃気楼(しんきろう)が見えました

これは20日のお昼すぎ、12時半頃の写真です。どこに蜃気楼が出ているか、わかるでしょうか? 点線で囲んだあたりに蜃気楼が見えます。水平線の向こうの氷山が浮き上がって見えているようです。 19日は快晴で、風も弱く、冷え込みました。海氷に近い下のほう…

月夜・天体望遠鏡・オーロラ

月がだんだん大きくなってきました。19日の夜、満月の4日前です。 月の満ち欠けは、日本でも南極でも同じです。 このあと雲が取れて、ひさしぶりに快晴になりました。天体望遠鏡を出して木星や土星を見てみました。 望遠鏡はタカハシFC-76。20年くらい前…

産地直送・南極農園

14日の晩ごはんに、みどりの色も鮮やかなサラダが出ました。 この時期に、日本からもちこんだ葉っぱがこんなに綺麗なはずはないのです。 これは、昭和基地内で作られたものです。 わたしが前回越冬した9年前には、生産できるのはもやしとかいわれだけでした…

【書評】南極越冬記 西堀 栄三郎 著

昭和基地の食堂には、日本でもっとも南の図書室 として紹介された書架があります。「国内で出版されている、南極・北極・高山の探検記や越冬記、オーロラやペンギン、雪氷、大気、地学など南極の科学に関する普及書や一般向け学術書がほぼ網羅されています。…

ディーゼル発電機の交代

太陽光発電や風力発電などの再生エネルギーも導入されていますが、昭和基地での発電の主力は、軽油で動かすディーゼル発電機です。発電はもちろん、エンジンの熱で雪を溶かして水を作るなど、無くてはならないモノです。 ディーゼルエンジンと発電機は2セッ…

はんぶんオーロラ、はんぶん曇り

15日の夜は3時間ほど晴れ間が出て、オーロラが見えました。 もっともふつうに見られる、緑色のものでした。 下のほう、真ん中よりちょっと左に見えているのは木星です。 右下は、気象観測の機械をチェックしている隊員のあかりです。夜10時すぎでしたが、日…

続報:しらせがモーソン基地からケーシー基地にオーストラリア隊を運ぶ件

無事にお客様を送り届けて、しらせは帰途についたようです。 kachimai.jp オージー66人を加えた艦内生活は、楽しくも大変だったようです。 "One week is enough." というつぶやきが漏れてきましたよ。 オーストラリアの環境大臣からのお礼のことばがリリース…

越冬隊と映画「エヴェレスト 神々の山嶺」(代理人投稿)

友人の訃報から1週間、代理人はぼんやりと過ごすことが多かったように思います。 nankyoku-30nin.hatenablog.com 覚悟はしていたけれど、いざ現実となると感情がざわめきますね。 同世代を見送るのはつらい。。。 この場を借りて、旅立った彼へ。 「ありがと…

休日日課:Tシャツを藍で染める

13日の日曜日は、週に一度の休日日課。午後は藍染をしましょう。との声がかかりました。越冬中に麺を打とう、という隊員が、前掛けと三角巾を染めるとのことで、白いTシャツをもって参加しました。 まず糸か輪ゴムで絞りを作って、 バケツに準備した藍で染…

おたんじょうかいとひなまつり

57次隊の越冬隊員はなぜか3月生まれが多いです。30人中5人。12日のよる、誕生会とひな祭りを兼ねたパーティが開かれました。 ご馳走は、写真の右上から時計まわりに、オードブル、ゆでガニ、スペアリブのロースト、ぶりカマのロースト。さらに左に手巻き…

赤いオーロラが出た

3月11日の夜、きれいなオーロラが見られました。 目で見てもわかるくらい赤っぽいものでした。昭和基地では珍しいタイプです。 赤いオーロラは、高度500kmぐらいの高いところで酸素原子が光るものだそうです。デジタルカメラの画像では、このとおり赤茶色の…

南極に道を作る

道を作る、といっても土木工事ではありません。雪上車などが移動するルートを決めて、赤い旗を立てます。吹雪に巻かれても、旗の場所(緯度と経度)がわかれば、どこにいるかわかります。海氷の上に作ったルートは夏に氷が溶けると旗が倒れたり、流されたりす…

雪上車運転教習

南極での野外活動に欠かせないのが雪上車。9日午前、運転講習を受けてきました。 これは30型。「さんまる」と呼びます。海に落ちてもしばらくは浮いていられる、軽量・小型の雪上車です。 これは40型。「よんまる」と呼びます。基地周辺や海氷の上でよ…

ハナニアラシノタトヘモアルゾ

友人の訃報が入りました。 闘病生活も長く、わたしの帰国後に再会するのは難しいであろうことは、わかっていました。出発の3日前、昨年11月29日に彼の入院先の病院に焼酎をこっそり持ち込んで、別盃を交わしてきました。 日本にいたからといって、なにがで…

東オングル島内を歩く

3月7日の午後、東オングル島内行動訓練に参加してきました。3班にわかれての全員参加の講習で、今回の参加者は安全主任を入れて11人。危険なところはどこか、野外で行動するときに気を付けることはなにか、などを実際に歩いて学びます。 基地からちょっと…

悔しいオーロラ

昭和基地でも、0時過ぎには真っ暗な夜がやってきました。 6日の夜はオーロラが出そうだと予想されていましたが、あいにくの曇り空。それでも雲を透して、オーロラが動いているのがわかりました。 雲間に星も見えていたので、だめでもともと、と写真を撮っ…

しらせがモーソン基地からケーシー基地にオーストラリア隊を運ぶ件

オーストラリアの観測船「オーロラ オーストラリス」は、2月24日に座礁して動けなくなりました。南極では冬が近づいて、行動できる船は限られています。「しらせ」の出番となりました。 モーソン基地に避難している科学者等約70人とヘリコプター3機をケーシ…

ふんばるドラム缶たち

氷上輸送で運ばれてきて、荷物を取り出したあとの空っぽのコンテナがきれいに並べられています。 中身を使いきったドラム缶の上に載せて、地面から浮かせることで雪が吹き抜けていくようにしています。昭和基地では、雪は上から降るのではなく、横から吹き付…

桃の節句

3月3日はひな祭り。ちいさなお内裏さまとお雛さまが食堂に飾ってありました。 平日でもあり、冬に向けた準備の真っ最中でもあり、特別な行事はなかったのですが、晩ごはんはひな祭りらしく、華やかなちらしずしでした。 食後にはかわいい菱餅も。

南十字星とオーロラと

3月1日の夜、ひさしぶりに雲が切れてきました。午後11時過ぎの空です。南のほうは太陽が浅く沈んでいて、薄明るいです。 真上を見ると、星空が見えました。南十字星が写っていますが、おわかりでしょうか? 正解はこちら。上と同じ写真を、ちょっと明るく…