植村冒険館でカメラを見てきました
私が見たかったものはこれ、ニコンF2チタン・ウエムラスペシャル。
30年以上前ですから、写真はフィルムに記録されています。極寒の地では、フィルムが破損したり、潤滑油が固くなって動きが悪くなったり、バネが効かなくなったり、といった不具合がおこります。さらに、犬ぞりに積まれて常に振動にさらされるので、頑丈なボディを・・・とニコン(当時は日本光学工業)が特注品として作ったカメラです。3台製作されて、一つは植村冒険館に、一つは兵庫県豊岡市の植村直己冒険館に、そしてもう一つは植村さんが消息を絶ったアラスカ・マッキンリーのどこかにあるのだそうです。
昭和基地でデジタルカメラを使った経験では、バッテリーがはやく消耗してしまうくらいで、そんなに困ることはありませんでしたが、フィルムカメラは可動部分が多いですから、低温でのトラブルは深刻です。
植村さんの著作を読んで感じるのは、記録することに対する誠実さ、とでもいいましょうか。たとえば、果てしなくつづく氷のブロックを鉄棒で砕いて進路を切り開く、というような厳しい状況のもとでも、セルフタイマーで自分の写真を撮影されています。南極大陸でちょっとだけ似たような経験をしたのですが、三脚を立ててカメラをセットして、タイマーを掛けて走って戻って作業、なんてとてもやってられない。
記録して、それを世の中に還元しないと、冒険は意味をなさない、と考えていたのではないでしょうか。
植村さんの本で、私が一番好きなのはこれです。 巻末に収録されたエッセイ「遊びをせんとや生まれけむ」は、冒険することエッセンスが詰まった名文だと思っています。
植村直己と山で一泊―登山靴を脱いだ冒険家、最後の世間話 (小学館文庫)
- 作者: ビーパル編集部
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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