世間がもし30人の基地だったら

日本南極地域観測隊に参加して、2015年12月に日本を出発しました。昭和基地で南極の冬を過ごして、2017年3月23日に帰国しました。帰ってからも南極に関わることがときどきあるので、更新を続けています。

南極観測船を民間で動かせるか

 11日(水)に南極観測船「しらせ」が東京・晴海に帰港しました。

ここで、帰港の動画を見ることができます。

【放送予定】4月11日7:00〜南極観測船「しらせ」日本帰港 | NVS-ネコビデオ ビジュアル ソリューションズ-

大きな事故なく行動を終えられたようで、なによりでした。

 

さて、観測隊員は一足先に、シドニーから空路で帰国しています。11日に帰国したのは 「しらせ」乗組員、自衛官の方々です。   アニメ「宇宙よりも遠い場所」で、いちばん現実と違っているのは船の運行状況だと思います。民間の観測隊はお金をあつめて結成することはできても、船はムリじゃないかなあ。

 

意外に知られていませんが、日本から南極に行く人で、一番多いのは海上自衛隊員です。 

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「しらせ」の艦橋です。24時間、常に人が居るので、交代要員も必要です。もちろんエンジンにも、ご飯を作るところにも。

私の帰りみち、2017年の春に「しらせ」に乗っていた自衛隊員は、隊員・同行者の2倍以上です。 

nankyoku-30nin.hatenablog.com

 

以下、個人的な見解ですが。

例えば、民間の資金をあつめて月へ行くことは、できるかもしれません。

team-hakuto.jp

このHAKUTO(ハクト)は、日本の民間発の月面探査チームです。民間の月探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参加していました。が、結局、今年3月末の期限までに月へ行けたチームは世界中どこにもなかった、とのこと。

 

HAKUTOも「Google Lunar XPRIZE」も、民間のお金で動いているプロジェクトです。

こんなふうに、一気にお金を入れて実現してしまおう、ということであれば民間のほうが明らかにフットワークが軽くて、やりやすいこともあるのでしょうが、何年も継続する必要があるプロジェクトでは、公的機関のほうが着実に息長く実行していけるように感じます。

役所というところは、冗長で非効率な部分もありますが、組織の内部で弱いところを補完して、なんとかして一定のパフォーマンスを保っています。たとえば、その日の担当者が残念な人だから台風情報の質が落ちる、ってことはないはず。

乗組員の経験を引き継いで、南極まで安心して船を進めていく、ということでいえば、よりもいのペンギン饅頭号を民間の力で動かすのは、ちょっと難しいような気がするのですよ。

 

…公務員と研究機関職員とを経て、この春から民間企業に勤めるようになりました。