南極越冬隊医学調査フィードバック
2月24日、私が参加した57次南極観測隊員のたぶん最後の仕事に、横浜に出張してきました。南極越冬隊医学調査の結果報告と面談です。
寒さ、夏の寝不足、冬の日照不足、肉体的疲労、心理的ストレスなどの南極特有の環境が作業効率に与える影響の研究のために、越冬中に6回の調査に協力しました。
- 出発前 2015年11月
- 越冬初期 2016年3月
- 極夜 2016年6月
- 極夜あけ 2017年7-8月
- 白夜 2016年11-12月
- 帰国時の船内 2017年2月
紙に書く形式の検査で、1時間くらいかかる、けっこう大変な調査でした。研究の結果は学会、論文などのかたちで発表されるはずです。発表前に研究内容についての詳細は伏せておくのが、サイエンスの”仁義”ですので、どんなことをやったのか、はここでは書きません。
奈良女子大学の先生が研究チームにいらっしゃるとのことで、奈良女子大学せんべいをおみやげに頂戴しました。
鹿せんべいではありませんよ?
この日は結果の説明の後で、研究者と一対一で「こんな結果が出ていますが、この時期はなにがありましたか?」というような質問を受けるなどの調査に協力しました。個人の面談は20分くらい。わたしの場合は、オーロラ観測の夜勤があったためか、極夜期に他の隊員とはちょっと違った傾向がうかがえました。同僚の隊員は口を揃えて「雪かきがしんどかったです」と言っていたようです。
この医学研究、隊員にすぐメリットがあるわけではありません。データの分析は隊の行動が終わったあとなので、結果は現地では伝えられませんし、フィードバックも帰国後一年近くたったこの時期ですから。でも、今後の観測隊の、より安全でよりよい行動につながるといいですね。
TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」第八話:船酔いのおはなし
オーストラリアから南極に向けて、ついに出航しましたねぇ。
さて、今回の半分以上の時間、彼女らは船酔いで苦しんでいたのですが、観測隊員にも酔ってしまう人はいます。でも、無理にでもごはんを食べなさい、とは言われません。白湯だけで何日か耐えていた、というかわいそうな人もいました。
私は、さいわい船酔いには強くて、三度三度のご飯を美味しくいただいてました。
ところで、女子高生諸君は、大揺れの夜に甲板に出て波しぶきを浴びてましたが、そんなことは絶対にしちゃいけませんよ! 船から人が落ちたときに大急ぎで人員確認する訓練もありましたが、実際にそんな事故が発生したら、救出するよりもご遺体を探すようなことになります。
艦橋に上がれば、迫力ある波を安全に見ることができます。高いところにいるので、揺れ方は半端ないですが。
さて、吠える40度、狂う50度、絶叫する60度
という、南極関係者にはよく知られるセリフが出てきます。ここでの40度は南緯40度のことですが、そのもとは、
Roaring 40s, Furious 50s, and Screaming 60s
というフレーズであるようです。
訳しようによっては
吠える40代、狂う50代、絶叫する60代
…もうすぐ私も狂うお年頃。
日テレ「世界の果てまでイッテQ!」登山部南極プロジェクト
3時間スペシャルをリアルタイム通しで見るのはしんどいので、録画して、ようやく視聴完了しました。
まず軽く南極点へ、というのがうらやましい。さすがに地上波は資金が潤沢だ。
- お湯花火
- かき氷
- 息が白くならない
このあたりは、南極あるあるの常連ですね。放送されてから、「お湯花火」で検索してこのブログにおいでになる方が急増しております。
ヴィンソン・マシフ山(標高4892m)へも、ツアーが出ているんですね。南米プンタアレナス集合・解散で450万円くらい。
ふもとのキャンプでのくらしは、一昨年の10月に経験した南極大陸への旅を思い出しました。
イモトさん一行は強風でテントがあおられて、かなりつらい目にあっていました。テントではなく雪上車で暮らしていたので、強い風が吹いてもそんなに困りはしませんでしたが、それでも「南極では何が起こるかわからない」というセリフには心から同意。何かあっても、ヘリコプターなどによる救援は期待できない、というのも大陸旅行とおなじです。ともかくも、みなさん無事で帰ってこられてよかったですね。
個人的に一番印象に残ったのは、ユニオングレイシャー・ベースキャンプのご飯がおいしそうだったこと。
暖かいものが食べられると元気になります。昭和基地の夏宿舎もバイキング方式にしてもらえるといいのに。
このところテレビの記事ばっかり書いているなあ。マツコ・デラックスの番組では、観測隊員の服が紹介されたようですし、今年は南極の当たり年なのか?
TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」第七話:観測船乗艦
フリーマントルに着いていよいよ観測船に乗りましたね。
観測隊員は一列縦隊で乗り込みます。先頭は隊長。
私が57次越冬隊で南極へ往復するときに乗った「しらせ」が民間観測隊に使用されているという設定なので、画を見るとちょっと懐かしい。
私が使わせてもらったのは二人部屋でした。作中で高校生たちが使った四人部屋もあります。寝相はともかく、いびきなどで辛くならないように、耳栓はもっていきました。
番組でも紹介されていたように、引き出しにはロックがかかっています。ロックがないと、暴風圏で大揺れしたとき飛び出してきて危ない。
船内はたしかに広くて、階段がいっぱいあるので迷子になりそうです。ただ、まったく外に出られない(あたりまえ)ので、じきに道順は覚えます。
艦内でビールを運んでいるのは、たぶん南極へ向かうあいだに呑む免税品でしょう。ビールに限らず、艦内で物を運ぶときにはバケツリレー方式。人を並ばせて荷物を順々に渡して送りますが、人手不足なので持ちあるいて運んでいるのかな。
あと、女子高生諸君
荷役作業時にはヘルメットをかぶりなさい!
TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」第六話:旅券の話
第六話は、観測隊員の実際の行動と重なるところがほぼありません。なので、隊員のパスポートのお話でも。
日本國公用旅券・ OFFICIAL PASSPORTと記されています。
公用旅券は「国の用務のため外国に渡航する者及びその者が渡航の際同伴し、又は渡航後その所在地に呼び寄せる配偶者、子又は使用人に対して発給される旅券をいう。」
旅券法第2条第1号
観測隊員は国の用務のために出かけてくるので、この緑色のパスポートを発行してもらいます。宇宙よりも遠い場所の女子高生たちは国の用務ではないので、一般旅券でしょうね。
公用旅券は、一般の旅券と違って渡航先が記載されています。ここに書かれていない所には行けない、ということです。
私のパスポートには、渡航先として
- オーストラリア(船に乗り込む/降りるところ)
- 南アフリカ共和国(昭和基地から一番近い文明圏なので、緊急時の搬送に備えて)
- シンガポール(帰りに飛行機を乗り継ぐ可能性がある?)
- 香港(帰りに飛行機を乗り継ぎました)
- 南極地域 (Antarctic zone)
が記載されています。いちおう、シンガポールには行けるのですね。乗り継ぎでも空港から出なければ、旅券を提示することはないのですが、何らかのトラブルで一晩、二晩過ごすことになると大変ですから。
私の参加したの57次越冬隊は、2015年12月の往路は成田空港からオーストラリアへ直接向かい、2017年の帰りには香港で乗り継ぎをしました。香港には朝5時到着、8時40分出発で、空港の外に出ることはありませんでした。
なお、旅券は往路にオーストラリア・フリーマントルを出港したら隊の庶務担当がまとめて保管します。 日向さんみたいに紛失騒ぎのないように、です。 (^-^;
あ、飛行機の座席は、隊長もみんなエコノミーですよ。