TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」第十二話:内陸旅行
一話で内陸旅行へ行って帰ってきてしまいましたね。雪上車での旅行は毎日同じようなことの繰り返しなので、これで十分なのかもしれません。
まず、内陸旅行ってなに?というところから。
昭和基地は南極大陸から4キロほど離れた島にあります。南極大陸へは海を越えないと行けません。夏は観測船のヘリコプターで、冬は凍った海を雪上車で渡ります。
女子高生たちが乗っていた雪上車は、SM100型という重さが11トンくらいある車両で、その多くは南極大陸の拠点に置いてあります。真冬の、寒さが厳しく氷が厚い期間だけ、昭和基地に乗ってくることができます。
私は2016年の10月に、17日間の旅行に行ってきました。
このときは、8人で4台の雪上車を使いました。車内は十分に広いのですが、例えば車が故障して動かなくなった、という事態に陥っても、別の車に移って全員が無事に帰れるように、台数には余裕をもって計画します。
二人なので、夜はこんな感じで休みます。彼女らが寝ていた二段ベッドは使いませんでした。
二人で交代で運転します。移動中はトランプで遊んだりはしません。エンジン音と振動が激しくて、声を張らないと会話もできないのです。
ちなみに、免許は必要ありません。昭和基地で半日ほど講習を受けるだけ。
まあ、対向車は来ませんし、歩行者が飛び出してくることもないでしょうからね、たぶん。
アニメでも描かれていましたが、給油は手回しポンプで、ドラム缶から雪上車へ軽油を補給します。雪上車の燃費は一リットルで200メートルくらい。寒くなると燃料がちょっとドロリとしてくるので、ポンプが重く、仕事も辛くなります。
とまあ、懐かしく見た今回でしたが、いちばん印象深かったのは、冒頭の家族へ連絡のシーン。南極では、ちょっとしたミスで命が危険にさらされます。これまで60年以上の日本南極地域観測隊の歴史上、隊員の死者は第4次隊の一人だけですが、これは僥倖に近い、との話も聞きました。
娘の通う学校に、こんな連絡をさせることがなくて、本当に良かった。
あれから一年
今日、23日に第58次日本南極地域観測隊越冬隊員と、59次夏隊員が帰国します。残念ながら仕事の関係でお迎えには行けませんが、本当におつかれさまでした。
私が日本に帰って、ちょうど一年が過ぎました。
昨年の東京での桜の開花は3月21日で、ちらほらと咲いた花に迎えてもらえました。
今年の開花は一週間早く、3月17日。今日帰ってきた隊員は、半分くらい咲いた桜を見ることができそうです。
あれから一年、テレビやラジオに出たり講演したり、ブログも続けてきました。意外と南極と縁が切れないなあ、というか、はやく南極観測のデータを使った論文を出したいものです。もう一息…。
昨年の春とずいぶん違うのは、花粉の量。今年はキツイ!
アレルギー性結膜炎がひどいので、昨年昭和基地でぽちっとして購入したスポーツサングラスのレンズを透明なものに変えて、愛用しています。
昭和基地でもどこでも、とりあえず花粉のないところへ、ひと月くらい避難したいものです。
今週のお題「お花見」
TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」第十一話:南極からの中継・ほか
とりあえず女の子は風呂に入れとけ、というのは”ヤマノススメ”でも見たような気がする。"水戸黄門"にも通じるものがありますな。
ともあれ、昭和基地の浴室(掃除中)です。女性用のお風呂はユニットバスなのですが、女性が多いようなのでこちらをつかっているのでしょう。
24時間あたたかい循環風呂ですが、入浴時間は決まっています。節水のため浴槽のお湯の入れ替えは月に一回くらい。水のもとになる雪はたくさんあっても、お風呂に使えるようなきれいな水にする機械の能力が限られているので、節水は大事です。
さて本題、 女子高生たちがやっていた国内への中継ですが、昭和基地には衛星回線でインターネットに繋げるので、テレビ会議システムを使うことができます。
越冬中は「南極教室」といって、隊員が司会、スイッチャー、タイムキーパー、屋外レポーターなどのしごとをして実施します。nankyoku-30nin.hatenablog.com
わたしは2016年6月に、娘が通っている小学校と昭和基地を衛星回線で結んで中継することができました。
彼女らがいる夏の間は、隊員は仕事が忙しいので「南極教室」をやる余裕はありません。でも、夏隊には近年、学校の先生が同行者として参加して、国内向けに「南極授業」をやります。年末から2月くらいまで公募されていますよ。
平成30年(2018年)度 教員南極派遣プログラム 実施要項 │ 国立極地研究所
これに参加すると、11月から翌年3月まで、2学期後半から3学期いっぱい授業できないので、学校の理解をいただくのが大変かもしれません。
南極からの中継で、意外と大変なのは時差。昭和基地は日本よりも6時間遅れです。
たとえば日本で午後2時からのプログラムだと、昭和基地では朝の8時。機材の支度、とくに屋外中継のためには、早朝から作業することになります。
オーロラ観測など越冬隊員の本業とはあまり関係ない仕事で、なんども打ち合わせしたり早起きしたり、それなりに大変な仕事ですが、こんな話をこどものころに聞けたら楽しかったかなあ、という思いもあって、けっこう頑張りましたよ。
『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』を見ました
来週の金曜日、3月23日に南極観測隊58次越冬隊と59次夏隊が帰国するそうです。
昨年のいまごろ、『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』が公開されていて、代理人はこどもといっしょに見てきました。
私の帰国後もしばらく上映していたようですが、ばたばたしていたので映画館にはいけませんでしたが、つぎの映画ドラえもんが公開されるタイミングで、3月2日にテレビ朝日系で放送されました。で、録画したものをようやく見ることができました。
のび太くん、最初は半ズボンで南極にでかけてました!
そのあと防寒着を着ていましたが、22世紀になっても防寒着の外観はあんまり変わらないのですなあ。
昭和基地は、ほんのちょっと画面に登場しましたね。海の氷上から見た感じは、たぶんこのアングルに近い。
わたしが参加した隊の一つ前、56次越冬隊に、ドラえもんの版元である小学館から隊員が出ています。越冬経験を反映した絵やストーリーがあるかな、と思ったのですが、このアニメを制作しているころは、まだ南極にいたはず。
それにしても、どこでもドアで南極に行けたら、いいなあ。